第八三一回 実はね、もう少し満喫していた。


 ――皆で、バンプラを組み立てる前に、もう少しだけ満喫していた梅田の地を。



 ドバシカメラの、その店内を見て回る。様々な種類の電化製品。

 そこに時代の進化を見る。


 キラキラ輝くこの子たちの瞳。千歳ちとせちゃんと菜花なのかちゃん……ええっとそれから、と思っていたら、「一奈ひとな」と元気よく……右腕を骨折している女の子が。そして、まるで連鎖するように、「じゃあ、私たちも名前で、です」「瑠璃るりです。この度からお世話になりますね。生徒会の梨花りか先輩に千佳ちか先輩。今日は堪能しましょ、バンプラ」と、自己紹介の場となったの。どうやら生徒会がらみの子たちのようだ。


 それにしても、この場所が珍しいのか……


 何もかもが新鮮な趣。絶えない笑顔と弾む質問たちで、その答えも弾んでいる。


 見て回るだけでも、この子たちには冒険ともいえる新鮮な風景。五階の模型コーナーだけでも、きっと飽きないことだろう。そしてついに……


「あった!」

 と、幼気な声。何とも梨花の声と同時に菜花ちゃんの声も響いた。


 顔を見合わせる二人。すると同時にプッと笑って、その周りをも笑顔に包んだ。殺伐とした世間を忘れそうな、そんな一時。まるで世界が二つあるような錯覚さえ覚える……


 今のような世界なら、


 きっと世間も、明るい話題で盛り上がることだろう。遠い日に見た光景と同じで、そこには自己否定はなくて、誰もが使命ある人材と、前向きになれる世界。同じ現実世界に存在して……後ろ向きな僕は、前向きになろうと、常に挑戦の日々を送ってきたと今なら、


 今なら、心から堂々と自信をもって断言できる。


 一片の曇りもなく、この子たちと共に、明るい未来を築きたいと、そう思った。


 その時だ! ボワッと……という表現よりも、もっと神出鬼没で、いつの間にかそこにいたの、諸葛しょかつ先生が。「良い心掛けです」という第一声から言葉を紡いでいった。



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