第八三〇回 終点は、また始まりの場所なの。


 ――つまりはエンドロールするお話。駅の改札を出たのなら、徐に地下へ向かう。



 そこから始まる梅田の地下。僕らは『ドバシカメラ』に足を進めていた。安全運転ならぬ安全歩行をもって、ソーシャルディスタンスを保ちながら、人波に溶け込んだの。


 ある意味で波乗り。イコール水兵さん。僕が中学生になって半年ほど着たセーラー服のイメージ。まるで航海士になったような、そんな感覚。


 向かう先は、そんな感覚を保つ模型屋。白い木馬のような戦艦で宇宙を航海した、アニメに登場するリアルなロボットたち。……でも、そのイメージは覆されて、初の女主人公でパイロット。しかも僕の大好きな新幹線のゼロ系が誕生した年の、バレーボールで活躍した東洋の魔女を彷彿と……連想させるようなタイトル。不思議な魅力がある機体。


 梨花りかだけでなくて、僕も作りたいという激しき衝動。


 なので二人並んで、行進する。店内を威風も堂々と。


 すると品数薄いの、相も変わらず。あるかどうか? すぐさま探すの、梨花と呼吸を合わして……ここは地下からエレベーターで上昇した五階の模型コーナー。何とかここで入手したいと思う。なぜなら、『ウメチカ戦』が行われた、想い出の場所だから。


 第三回……のみだけど。第一回と二回は、地下で行われた。


 思えば、地より湧きたるエージェントのような感覚……と、脳内の隙間から、入り込んできたの。そして視界にも入った。出会いが夏休みの、あの絹の道。そして生徒会と繋がりのある、もう一組の双子のボクッ娘たち。どうやらお友達も一緒のように思える。


「やあ、君たち」


 と、僕は声を掛けた。……というものの、ついさっきの瞬間までは無視しようと、見なかったことにしようと思ったのだけど、梨花がアイコンタクトで声を掛けろと……


 威圧するものだから。すると梨花は、アイコンタクトとは別ものの満面たる笑みを浮かべつつ、「君たちもバンプラ好きなの?」と声を掛けた。僕と、千歳ちとせちゃんと菜花なのかちゃんと、その他お友達が三人の間に。「そうだよ、皆で作るの」と、千歳ちゃんが答えた。



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