第一一五章 ウメチカだけに、やはり梅田へ。

第八二九回 十月は、感受性豊かな季節なの。


 ――読書の秋とも言うけど、今はまだ、見える風景を満喫したい。



 車窓から、見える風景。


 静かな朝のイメージのようだけど、意外にも埋まる座席。


 その座席の背面に凭れ掛かって、僕と梨花りかは並んで立つ。スマホを見る人が多い。その中を僕と梨花は、流れる風景に夢中というか、ぼんやり眺める程度。そんなゆったりとした感じが良いの。今日は休日。二人であの場所へ向かっている。そこは梅田……


 エッセイを書き始めた頃は、僕は地名とかの名称を、ある程度ぼかしていたの。この物語の始まりは、まさしく梅田での出会いからだった。その出会いを経て梅田うめだ千佳ちか


 梅田の地下から始まった梅田千佳だったの。


 あれから、もう……三年と三か月ほど。僕にとって革命の日々だった。星野ほしのに戻った今も革命は続いている。今度は学園へと反映されている。生徒会と繋がるグループ。


 もう一組の双子のボクッ娘たちが暗躍しているから。


 そのことを知るのは、ごく一部。僕も察知はしているものの、その全貌には辿り着けない。その関係と直感は走るのだけれど、りんは今も入院中。お見舞いに伺ったのは、ついこの間。漸く面会できた。凛は笑顔の裏に何か……壮絶なものを抱えている。いくら誤魔化しても僕には、そのことは察知できる。教えてくれないけど、わかるの。


 凛には似合わない世界だから、きっと……


 その思いも乗せながら、臙脂色の電車は走る。午前十一時の風の中を。


 レールに従って走るの、その場所は終点だ。基本はスイッチバックと、河原町と梅田を行き来している私鉄沿線。僕らは凡そその中間から乗車している。そして今日は、僕らの着ているものは、お揃いではなく個性重視。……とはいっても「何でだろう?」


「長袖の縞々も、スカートも、それに何々? 靴まで。色違いなだけじゃない」


 と、梨花が言うのも尤もで、偶然の一致なのだろうか? 何かにつけてそうなっちゃうようなの。学園の制服だとサイズまでお揃いだけれど、それに、お洒落のリボンまでも。



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