第八二七回 フムフムフム……成程ね。
――密室から見る、大揺れする緑の風景。大型な台風なために、暴風圏内も広い。
なので、二通りの嵐が存在した。嵐はお外にも、お家にも。しかしながら、風はそんなに窓を叩かなかった。的も広くビッグなウインドウだけれど、割れる心配はなさそうだ。
思いの外、緩やかで……
ネットワークアダプターも再インストールしたけど、それでも繋がらず、ネット。そこで留まったの、可奈もスマホの向こう側で、考え込んでしまった……
これ以上は、僕から見ても、
……難題ということは理解できる。そして、時間だけが流れる……
成す術無し、
その思考を掻き消すように、悪戯に動かすマウス。知らない者の強みでも、悪足掻きでも構わないの。退けず、譲れない思いだから。毎回、温かいコメントを頂いている双子のお兄様たちも、稚拙な文章でも読んでくれる人たちを思うと、泣きそうになる……
『
と、可奈の声が再び、スマホのスピーカーから流れた。僕はすぐさま脳内で記憶の糸などの思考回路……張り巡らす想い出の糸。とても細く繊細だけれど、グルグル回ることにより強度を増した。想い出はまるで八ミリフィルムのように強く鮮明になってくる。
「うん、勝手に更新した」と、僕が答えると、今度は『梨花、モデムはいつのもの? 確かケーブルテレビから引っ張ってるんだよね。いつから観れるようになった?』と、訊いてくるの、梨花に。梨花は、ちょっぴり小さな声で、
「ここに越してくる前……待って待って、僕が生まれた時にはもう観れたよ、ケーブルテレビ。って、それが何か?」と、語尾につれて大きくなる声。それは確信を意味するのだろうか? その証拠に『フフフ……成程ね』と、可奈の心の声が駄々漏れとなった。
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