第八二一回 今対面する、双子のボクッ娘同士。


 ――そして忘れていた。今ここは何処なのか?


 目的地以前に、僕らは現在地でさえも迷っていた。



 でも、それさえも吹き飛ぶことが……


 それがこの出会いだった。僕ら以外のボクッ娘との。しかも僕らと同じように、まるで鏡を見るように瓜二つという表現。似ているというレベルを遥かに超えていたの。


 そして自然の摂理のように、市場に向かう人の流れに、その身を預けた。僕らについてくるようにと、アイコンタクトで示す。もう一組のボクッ娘の双子に。次第に親近感を感じる。その行く末は、とある喫茶店……というよりは、インド料理店。


 本場のインドカレーが味わえるという仕組み。


 ここは日本ではないような場所? まるで絹の道を連想するような、そんな場所だ。


 テーブルを囲み、向かい合わせとなった二組のボクッ娘の双子。ラボで調理に勤しむのはインド人のよう。メニューも日本語ではなかった。……この子たちが助けてくれた。


 同じものを頼んでくれた、人数分。


 ここに五人いる。まずは名乗る僕らから。梨花りかとはもう暗黙の了解。可奈かなも同様に。


「初めまして、私は藤岡ふじおか可奈」「僕は星野ほしの梨花」「僕は星野千佳ちか。梨花とは双子です」


 と短くも順に。そして、次はこの子たちの番……


「初めまして、僕は星奈ほしな菜花なのかです。わけあって……追ってから逃がしてくれて、何と感謝して良いのか。……あっ、そしてこの子は星奈千歳ちとせです。僕の双子の妹で……千歳、御挨拶は?」「あ、ども、こんにちは……」と、言葉も短く、シャイな子なのかな? と思いつつも可愛く思える千歳ちゃん。少し目を逸らしていた。


 長らくお話する時間は、あまりないそうなので、せめて一緒に食を愉しむ。本場のインドカレーは色から味まで、日本のものとは異なる。僕の味覚が確かなら、あまり辛くないのだ。そのままガツガツと。すると、菜花ちゃんも千歳ちゃんも同じようにガツガツと食す……よほどお腹が空いていたのかな? と思える程に。



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