第八一八回 八月の風を、両手で抱きしめたら。


 ――イマジネーション。思えばそれが、芭蕉ばしょうさんの出会いだったと思うの。



 なら、可奈かなに感謝だね。


 だから今度は一緒に、あの日に行こうとしたテーマパークへ行くために、僕も一緒に捜すの、地図上でその場所を。可奈は「ありがと、一緒に捜してくれるのね、千佳ちか

 と、感謝の言葉……


 そして僕は「あの日、可奈が間違えてくれなかったら、僕は芭蕉さんに会えなかったから。感謝するのは僕の方だよ。芭蕉さんは、僕に会いたかったのだから……」と、傍から聞いたのなら意味不明だけど、僕には旧一もとかずおじちゃんが関係した大切な出会いだった。


「素敵な、出会いだったね」


「うん……」


「今度は私たち自身ね。素敵な夏休み。また三人で」

 と可奈も僕も、その視線を注いだ。梨花りかの方へと。


「わかったよ、僕も一肌脱ぐから」……って一肌? なら「また洗いっこだね。僕と可奈で、あの日のように」と、そう言ったなら「どーして、そーなるの?」との反応なの。


 地図上の捜索に、梨花も加わり……


 やっと見付けた。最寄りの駅から四駅だけれど、そこからがまた旅路。線が変わる。空中を駆ける電車へ。モノレールという未来の乗り物。……と、小さい頃、図書室で見た図鑑に載っていた。学園とは違う、小学校の図書館で。その童心に帰りたいという思い。


 そして今は八月の風……

 三年越しの再出発となる。また最寄りの駅からのスタートとなる。


 そこから四駅。間違いなく四駅という名の駅のホームだ。広がる緑の方面と、学園へと続く通学路。二つの世界観を兼ね備えている。選ぶは緑の世界へ続く、モノレールへ。


 お空を走る電車。風を切って走る。


 夏の薫りに心躍る。大人しくも座席に座る三人だけれど、心の中でダンスを披露だ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る