第八一六回 午後三時は、散歩道。


 ――帰り道にはまだ早いと太郎たろう君。僕の手を引いて歩いて行く。行く先は何処へ?



 僕にはわからない太郎君の進行方向。或いは何処へ向かっているのか? 細道は続く奥へ奥へと。求めるのはピリオドの向こうと、ある種の希望が湧いてきた。


 お互い水着から、探検スタイルへ着替えたけど……


「しっかり日焼けしたなあ、千佳ちか」と、漸く言葉が繋がっていきそうだ。


「太郎君も。きっと水着の跡クッキリだね」「まあな。でもそれは、さっき着替えた時に判明しただろ?」「いやいや、ササッと着替えたから、よく見えなかった」


 思えば一緒に着替えた。


 岩場の陰で。誰もいないとは思うけど、別々だと危険が伴うと思って……これは太郎君の発案だけど、もしかすると「太郎君のエッチ。そんなに見たかったの? 僕の裸」


 これはこれで、僕の方が脳内でボン! と効果音を上げる羽目になってしまった。


 太郎君は笑う。イケメンの域を超えて、ガハハハッと豪快に。こだまする笑いは、この散歩道をピクニックに摩り替えていた。手を引いていたのが、手を繋ぐに変わっていた。


 芭蕉ばしょうさんに続く奥の細道……


 それこそがこのピクニック。ピリオドの向こうへ歩み続ける。


 避暑地を創り上げる続く森の中、地球を救うと言っても過言ではない緑の世界。触れてはいけない大自然。世に発信したい程、僕は芭蕉さんの思いを心に刻んだ。それはイコール、緑を守るということ。自然と触れ合い共存できるよう訴えること、ペンを執ること。


 ペンを執るなら、


 僕は訴える。一個人としての意見を。


 若人の思いの丈を伝えるため、身をもって経験したこと。たとえフィクションだとしても、その思いは、紛れもなく現実の世界から生まれものだ。身をもって経験したことでないと描けないと僕は思うの。夢に見たことも、それもまた経験したことだから……


 そしてお花畑。そこで二人、食すサンドウィッチの味はリアルなものだから。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る