第八一二回 再会するも奥深くへ。


 ――古式ゆかりな駅を出たなら、そこに広がる緑の風景。続く細道は歩行者専用。



 まるでここだけ切り取ったような大自然。森の中へと誘われる。


 心の赴くまま誘われる。でも、それは目的地に向かおうとしている心。冒険心も忍ばせながら、RPGのようなワクワク感を保ちながら、程好い加減でバランスを取るの。


 それに応じたスタイル。


 リュックは必需品。麦藁帽子も熱中症対策には必須項目。忘れてはいけないのが水分補給。二リットル必要とするミネラルウォーター。人体の七割は水分だから。それはまるで地球と同じで……ここから先は、神秘の世界へ繋がってゆくの。まずは温暖化……


 それは地球規模の対策。


 これから未来へ進む子供たちのためにも、僕らにとっても課題となる。


 日本の社会は、僕らの住み良い環境へ変わってゆかなければならない。だから一若者の主張として僕はペンを執る。……革命と呼ぶには烏滸がましいかもしれないけど、僕らが肌で感じている事実は知ってほしいとその思い。胸中だけにしまっておけない事柄。


 そして手を取り合う、僕と太郎たろう君。


 そのスタイルは、まさしく冒険家。暫くは続く二人の旅。


 今度ばかりはもっと深く……奥深く歩む。川のせせらぎよりも小鳥のさえずりよりも深い場所。秘境と呼ばれる温泉でさえも。すると、やはりこのタイミング。現れたの。


 ――松尾まつお芭蕉ばしょうさんが、道行く僕らの目の当たりに。


 ある意味、緑が避暑地を創り上げている環境。程好い気候となっているこの場所が、芭蕉さんとの再会の場となっていたの。何しろ僕は三回この地を訪れているのだから。


 目の当たりの芭蕉さんは、芭蕉さんに似た人とか、そうではなく紛れもなく本人。案内が終わったのならスーッと消えているから、どう考えても本人以外の何者でもない。


 でも僕は、消えることはない。


 それは太郎君も同じ。まだ未来を歩かなければならないから……



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る