第八一一回 目指すは奥の細道へ。


 ――青色のイメージを持つ、駅のホーム。ここは『最寄りの駅』という名の駅。



 そこから私鉄沿線の情景を愉しむ。


 ホームでの待ち合わせから、ずっと君と一緒。僕のすぐ傍にいる、君の名は太郎たろう君。


 語り掛ける言葉たちよりも、

 今は車窓から見える流れる景色が、僕らの心情を語っているように思える。印象に残る映像美。とりとめのないお話よりも、確かな印象。窓の色は少しばかり青い。


 四駅……


 四つ目の駅を示している。思えばそこは、学園への最寄りの駅。……なら、そこではないよね? いつもならボワッと、白い靄が辺りを覆うのだけれど、どうだろう? 快晴の

お空、澄み渡っている。その一つ手前……そこは無人駅。正確には学園の最寄りの駅よりも一つ手前の駅。初めて訪れた時は、僕がまだ学園の生徒になる前の、夏休み期間中。


 可奈かなを筆頭に梨花りかと僕、三人で訪れた。


 あの日、可奈は本来の目的地と間違えてきたことを認めなかったけれど……今なら納得だ。確かに、行こうとしていたプールは、もっと奥にある場所だから。それはきっと、川よりも温泉よりも、もっと奥。最果てと呼ばれる場所だ。まるでRPGのダンジョンのよう。もう少し当時の僕らが気長だったら、発見できたのかもしれない目的地。


 三年が経ってから、可奈の間違いではないことを証明した。


 ……これは謝罪ものだ。ごめんね、可奈。今更だけど……心から詫びるの。心の奥底から。心の中だけで。そのことは太郎君は知る由もないこと。僕の胸の中だけにあるの。


「どうした、千佳ちか?」と、太郎君は僕の顔を覗き込む。


「な、何でもないよ。ここから少し長いみたいだから」と、僕は言う。お顔を赤くしながらも。鏡がないから見ることはできないけれど、この火照り具合は間違いなしだから。


 楽しかった日々を思い出せば、

 あの頃のように新鮮になれる。久しぶりのことなら尚更だ。




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