第八〇九回 その後の足取り……追うと。


 ――それは紛れもなく帰路。残る足跡を追っても帰り道。寄り道はなし。



 僕と梨花りか、並んで歩く……


 見上げれば青空。快晴以外の何ものでもないほど晴れ渡っている。響く風鈴の音は、とても風情豊。その一時さえも補習のことは、少し頭から離したいの。補習を受けるのは何故か僕ら二人だけ。それも得意と言っては何だけど、少なくとも苦手ではない国語……


 僕と梨花、並んで受けることとなる。


 目の当たりに、瑞希みずき先生を講師とし。瑞希先生は国語の先生。でもでも赤点は取っていない。これもまた二人とも。駅のホーム、そこから改札までは、太郎たろう君も可奈かなも一緒。


 今はもう別れて、バス停まで。


 そしてバスが来て、僕と梨花は並んで座る。梨花が右で僕が左。思えばいつもそう。


 食す時も、歩く時も、お布団で一緒に寝る時も……何故だか、そうなってしまうの。


 もしかしたら、お母さんのお腹の中でもそうだったのかな?


 ……そう思いながら、バスを降りる。


 また歩く。リュックの背負い方も同じ。僕は黄色で梨花は桃色。学園ではリュックの指定はないの。自由で個性豊かな其々の色。それもまた醍醐味と思われる。


「千佳、学園の行事は八月六日だけ?」


「どうしたの、梨花? なに藪からステックに?」


 少しクスッ……と、笑い声が漏れる梨花だけど、まだ質問は終わらず、答えも答えにならず、ここからが本題。それよりも僕と梨花、学園を出てから今、漸く喋り始めたの。


「八月二十四日の『ふるさと祭り』は? 去年は中止だったから、今年はどうかな?」


「あるよ。展示会が芸術棟で。何でも令子れいこ先生ともう一人、顧問になった人がいるそうなの。……実はこの間、明峰メイホウから聞いたの。『チカモソノトキキタラオネガイネ』って」


「何か面白そうだね、僕も協力するよ」


「ありがと、梨花。何でも都市伝説的なものが多いの、芸術棟は」



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