第八〇八回 僅か一時間程度の滞在時間。


 ――それは週末を迎える前の、ホームルーム終了間際の有様。それに喩えられる。



 帰り支度急ぐ、教室の生徒……


 と、その前に違いはある。それは成績書の類、渡される。もちろん手渡し。瑞希みずき先生から直々に。満面な笑みを浮かべる瑞希先生だけど、その成績書の内容は意外と……


 そうだね、シビアという表現この上なく。


 平均点は維持して……まあ、確かに得意不得意はあるけど、山あり谷ありとも言えるのかな? ギザギザやジグザグとも。グラフに表現したなら自己主張よりもハッキリ。


「うん、確かにねえ……」


 と、ヌッと梨花りかの顔近し。それもそれも隣の席に座っているりんをも押し退けてで、そのために僕は「のあっ」という間抜けな悲鳴を上げる羽目となって、「ちょ、ちょ、ちょっと梨花? 何見てるの?」という感じの文句へと発展し、僕もまた、やられたらやり返すので、凛も同じく押し退けられているだけではなく僕と同じで注目するの。それはもちろん梨花の成績書。その感想はといえば、


「こらこら見るなあ」と、梨花は言うけど、どの口が言う?


「人のこと言えるの?」と、まず僕の感想。続いて「ここまでソックリとはね」と、凛は梨花だけでなく、いつの間にか僕の成績書とも比較して感想を述べる。やられてなくてもやり返している凛。それはそれは僕を上回って倍返しの域に達していると思われる。


「得意は違っても、傾向は同じねえ」


 と、瑞希先生も付け加えているの。それも、スーッと僕らの背後に立って。夏の怪談よりもサーッと冷たいものが背筋を走って「のわっ!」という短い悲鳴で表現された。


「本当に呼吸ピッタリね、梨花さんと千佳ちかさん。しかも二人仲良く補修。八月六日に予定してるから」と瑞希先生が言うも……「それって結局、登校日じゃん」と、凛が華麗なるツッコミを入れて「アハッ、バレちゃった?」と、瑞希先生は可愛くテヘペロ……


 そうなの。八月六日は登校日。少し先の本来なら毎年恒例の学園行事ということ。



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