第八〇六回 ♪ もう幾つ寝ると夏休み。


 ――その様なフレーズが脳内で繰り返され、エッセイ執筆の後で枕元へと誘う。



 温かな室内温度も手伝い、深い夢の中へと。


 繰り返される夢は思い出。思い出に変換されて、現実と重なる。その姿が物語に描かれているのかもしれない。夢は、現実で見たものが合体した姿……


 夢は理想とも解釈ができて、目標に変換される。


 僕は学園生活に夢見ていたことを、このエッセイを通して現実にした。パパがいる家庭のことも現実になった。……この上ない幸せなの。


 そして、夏休みまで三日。


 学園生活も楽しく夏休みも……注意は必要だけど、初めての制限なしの夏休み。


 泳げるようになってから、太郎たろう君と初めて泳ぎに行く約束。水着も用意したから。電車に乗って海へ……そう行ける。お盆に行くと約束したお祖母ちゃん。そこから越前海岸は近い。でも「初めはプールから」と太郎君は言った。


 僕は思う。


 電車に乗ってプール。この近くに? フムフム、この近く……


 あるよある。何回か行った場所だ? 奥の細道の芭蕉ばしょうさんが案内した場所の、その奥深く。見えたことがある。泳いだのは川。案内されたのは温泉だけど、まだその奥。


 奥の細道だけに奥深くだ。


 確かに見えたの。不思議だけどファンタスティックな施設。大自然に囲まれた海のように広がるプールが。三度見たから偶然とは言わせないと覚悟を決めるの。


 つまり三日後……


 一学期の終業式が終わった翌日。そこへ行くと二人で決めた。


 最寄りの駅から出発。そこに集合となる。……僕が想い描いていた物語は、旅をする物語。そのエピソードも以前からしたかったこと。今はもう夢ではなく、現実の目標と変換されたのだ。高等部初の夏休みは、電車での旅を描いたお話を目指そうと思った。



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