第八〇三回 クラッシュ! その先。


 ――そこに辿り着けば、エンディングを見ることができそうだけれど、まだまだ、まだまだ僕らの三年越しの戦いは、そんなに簡単なものじゃない。きっとそうだよね?



 心の声は、青い閃光となって貫いた。


 でも相殺。お互いの技は、まるで蒸発したように消滅した。掻き消されたのだ。


 超電磁に超電磁が正面から衝突した結果、反発し合ったの。ここからは暫くの間、繰り返される反発。技と技が消滅し合っていた。……ということは、勝負が着かない。


 そこで途切れた……

 超電磁という三文字が……


 あの青い閃光と共に。戻ったの、地味な戦いに。でもそれは、この二人が初めて対戦した時からの続きともいえる戦いで、その勝負は続いてゆく……


 あの頃は、僕が圧勝していた。噂によると、瑞希みずき先生は最強のゲーマーだけれど、僕の方が遥かに力が上で、僕は天狗になっていた。今はどうだろう? かなり手強い。


 油断したら簡単に負けそうな程だ。


 僕はあの日から、天狗にならないよう心掛けてきた。有り得ない程の敗北の味……傍で見ていた梨花りかに「ザマ―ミロ」と言われて、喧嘩して、悔し涙を流した日から。正直それだけではないけれど、梨花の温かい言葉に、僕は謙虚に受け止めるようになった。


 今あなたと対戦していることは、


 それを彷彿とさせ、そのことをも教えてくれる先生。


 最後まで諦めないことを教えてくれた人、最後まで……HPヒットポイントのメーターが空になるまで戦い続けている。最後にヒットしたものは何だろう? どの様な技? 接戦だったと思うの。……見事にキックが命中した。必殺技だった。タイガーキック……


 空中で一回転してからの急降下で決めるキック。完璧なまでに、僕にヒットしたのだ。


 僕は崖から落ちて、爆発した。


 まるで怪人のように、仮面タイガーのオマージュで展開される定番の終わり方をした。



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