第八〇二回 隠し味と隠し技の対戦。


 ――喩えるならラーメン。翔さんの作るラーメンには隠し味があるように、今の僕らの対戦にも隠し味は存在する。……いや、それを言うなら隠し技とでもいうべきだろう。



 拡大の機能がない僕のアバターに合わせて、瑞希みずき先生は変身しても等身大を維持して対等に対戦してくれているの。もし二段変身で五十七メートルに拡大したのなら、意図も簡単に踏み潰されて試合終了となってしまう。魔法少女の能力はあるものの、その対格差は埋められず……こればかりは敵の情けとも。しかしながら……


 その能力は、拡大も関係なく豊富な技。


 風力で変身する構造だけれど、そこから電力に変換し、超電磁の力が生じる仕掛け。


 飛び道具も兼ね備えていたの。初めはパンチとキックの肉弾戦と思わせつつ、いきなりの攻撃。超電磁で発生したヨーヨーが、僕にダメージを与えた。


「なっ?」


「卑怯と思った? 飛び道具がないなんて一言もいってないよ」


 その通りだ。僕が勝手にそう思っていただけ。隠し技と思っていても、それはあくまで相手の持つスペックに過ぎない……なら、次なる展開は? よく考えるの、千佳ちか……


 と、僕は自分で自分に問う? つまり自問自答。


 間髪入れず竜巻が僕を襲う。人工的に作り上げられた超電磁の竜巻……治まると同時に蝶の模様をした波紋が、僕の動きを封じた。見ると綺麗なモンシロチョウの模様……


 そして高速回転する瑞希先生のアバター。ドリルのようにスピンして突進してくる、僕に向かって。僕のお腹に大きな穴が、或いは真っ二つになるようなパターンだ。藻掻けば藻掻く程、超電磁により動きを封じられ……そこで閃いたの。目には目を……


 歯には歯をってね。


 電気には電気で解除する。僕自身が人間スタンガンとなることを決心した時、雷鳴が轟き会場に……青い閃光が僕を覆って電光石火! 放つ閃光。螺旋を描きながら、高速でスピンしながら突進してくる仮面タイガーの中心を捉えたの。一瞬で貫いた……



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