第七九四回 満喫したかい? いやいやこれからだよ。


 ――戦士の休日。明日へ繋がる今日くらいは、少し羽目を外してもいいと思える。



 だから、ここからまた繰り出す御堂筋。真夏に向かう御堂筋。


 梅田の地下から地下鉄に乗り合わせる。そこにはね、年がら年中ハイテンションな御方が居られる。きっと猛暑さえも吹き飛ばすような……いやいや、逆に灼熱になりそうな、


 とても熱い御方だ。「らっしゃい!」と元気溌剌な声。この一声に尽きる。


 鐘を打つ音。喩えるなら……

 煩悩をもお友達にしてくれる、そんな御方だ。「今日はどうする?」


「チャーシュー麵の特盛!」と、見事なる合唱。


 僕と明峰メイホウ、それからティムさんも交えて。「えっと、チャーシュー麵の特盛、三名ともだね、毎度あり!」と、活きのある復唱。特盛なだけに盛り上がること間違いなしとも。


 すっかりラーメン道が板についたしょうさん。そのご感想を明峰は……


「アノヒトハ、オンナノカタデスカ?」と、僕に訪ねる。


「ああ見えて、女の人だから」と、僕は答える、明峰に。


 すると地獄耳? 壁に耳あり障子に目ありのような趣で、隙もなく僕らの目の前に現れて二つの目を赤く光らせながら「おーい千佳ちか、ちゃんと教えなきゃダメだろ? ミス宝塚のようにカッコイイ女性だって」と言い放つの、僕は笑いを堪えながらも、


「そうだね、翔おねー様」「ネーネーチカ、タカラヅカッテカッコイイノ?」と息を吐く暇もない質問攻撃へと展開する明峰。ちゃんと答えるまで繰り返すことだろう。僕は「ほらほら来たよ、ラーメン」と、グッドタイミングで話題を転換することに成功。


 この量に……このラーメンの量にビックリするティムさんだけど、僕と明峰を見ながら食す。食しているうちにもう夢中だ。このラーメンにはそんな特徴があるのだ。


 食す時は無言。終始無言は夢中の証。スープは豚骨だけどアッサリ。麺は特盛だけれどもスープとの相性が麺の量を感じさせない。喩えるなら、わんこ蕎麦のように繰り返し味わえるそんな飽きない味なの。そして完食。三人が揃いも揃って……



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