第七九三回 大声援! 拍手喝采のその裏にも喝采が。


 ――あれは三年前。そこからもう三年となる。



 僕は願う。僕が戦いたい相手は、やはりあなた。決勝戦を大いに飾りたいから。


 僕は送る。拍手喝采。三年前から実現をしたい、その裏にも忍ばせている喝采。



 この会場には集ている、広がった僕の強敵。友の称号をもった僕の強敵。そして強敵は強敵とも戦う。……太郎たろう君には悪いけど、僕は瑞希みずき先生と対戦したいから。


 太郎君は怜央れお君と対戦したいと思っているけど、


 ……どちらも残った場合は、いや残りそうだから、僕はやはり瑞希先生と佳子よしこさんのペアーを応援する。今回の、三年目の決勝戦だけは譲れないの。心の中では、太郎君を裏切る。訴える目は、大いなる喝采として、その相手に届いたの。


 ――見事なる倍返しだ。


 車夫しゃふさんの動き、としさんの動きを見切っていた。


 瑞希先生も佳子さんは呼吸ピッタシな動き。まるでダンスを踊るような華麗な舞。まさにあれなの。修学旅行で披露したフォークダンス。これを戦いに取り入れたのだ。


 二人は密かに練習していた?


 いつも間に? まさかあの僅かな時間で? 柔よく剛を制すともいえる優雅な舞。見事に相手の攻撃を利用している。瑞希先生も佳子さんも変身はしなかった。


 車夫さんの攻撃が俊さんを襲い、俊さんの攻撃が、車夫さんの首を切断したの。切断といってもゲームの世界。俊さんの首も車夫さんの攻撃で切断されていた。……一体何が起こったの? その答えに辿り着く前に、スリーラウンドまで進められた。


 勝利を収めたのは、瑞希先生と佳子さんのペアー。勝利の秘密は優雅な回転にあったのだ。きりもみキックを放っていた。それが車夫さんと俊さんを同士討ちに導いた。


 僕は身震いした。……恐ろしい相手だと。


 でも、だからこそ喝采。幕はあくまで、いつものように開くのだから。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る