第七九〇回 その新たな出会いは、また原点だったの。
――僕らの出会いは、まさに原点だった。
梅田の地下での出会いから、僕の新章が始まった。ティムさんはきっと、僕と
何故そうなったの?
……明峰は、話してくれた。
ティムさんの暮らしていた国は、貧富の差が激しい国で……母と妹の三人暮らしで、明日をも知れない暮らしだった。そこはスラム街ともいえる場所だった。そして余儀なくされた日本での出稼ぎ。ティムさんの抱えていたことは、僕の想像もできないような壮絶な境遇だった。あの日、ティムさんが重ねていたことは、僕だけではなくお母さんも……
ティムさんの名前……
本当の名前は、
そして会う。足並みは、揃えてピタリと停止……
「ニイサン……」
「明峰なのか? 本当に……」
溢れる涙。それがこの二人の再会の大きさ、それまでの時間の長さや、様々に纏まらない思いを物語っているようだった。よっぽどのこと、それだけは僕にもわかるから……
「どうしたんだ? 何かあったのか?」
「サガシタンダヨ、ニイサンヲ。モウイインダヨッテ、ツタエタカッタノ……」
「か、母さんは元気なのか?」
「オクリダシテクレタノ。コロナガイチジオサマッタコロヲミハカラッテ、ニホンニイケッテ、ニイサンヲタズネロッテ。バイオリンレンシュウシタノ、コレガタヨリダカラ」
「……そうだ。そうなんだよ、辛かったろう。もう大丈夫だからな」
と、しっかり抱きしめたの、ティム……宇航さんは明峰のことを。明峰はもう号泣の域で、僕も、しっかり貰い泣き。ここからまた新章……今度は宇航さんと明峰の二人の。
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