第七八九回 そして続く、劉明峰という女の子の件へ。


 ――それは午前の風。まだ静寂を保つ青い風景。駅のホームで会う約束。



 そして姿を現した……リュウ明峰メイホウという女の子。見間違えることのない印象的な目力。長い髪、背中まで覆っている。今日は背負ってないバイオリン。今日は競技者ではなくお客様という名目でウメチカへ。僕とはここで、梅田のホームで待ち合わせをしていたの。


 今日に関しては、僕も同じ。明日こそが決戦の日。


 今日はこの子と、この子と一緒にある。


 何故こうなったのか? それはティムさん繋がり……ということ。あの日、出会いのあの日、ティムさんは重なったという。僕とこの子が。合わせて知ることになる、この子の実の年齢を。十三か十四歳と思っていたのだけれど、実は同い年だったの。


 赤いワンピースにブラウンのブーツ。それが今のこの子のスタイル。対する僕は、白いワンピースに……スニーカーというスタイル。紅白を飾るも履物は何かズレていて。


「まっ、行こうか、明峰」


「オーケー、チカ、サッソウトゴー」


 片言の日本語だけれど、言葉はわかる。昨日の今日会った仲なのに、もうこの様な会話を展開しているの。僕自身、驚きなの。僕は奥手も奥手で、あまり自ら声を掛けないのだけれど、……対するこの子も、きっと言葉の壁を気にして、あまり自ら声を掛けないのだけれど、……お互いがお互い、不思議と言葉を交わしていた。


 そして今、歩む二人並んで。

 梅田の地下へ潜るその先に、設けられた再会の場……


 僕が初めて会った場所へと、明峰を導く。何となくだけど、彼女とは姉妹にも似たそんな親近感があるの。身長は僕と同じくらい。……と、いうことは、


「チカ、ドコノガッコウイッテル? モウジュケンダネ、シボウコウトカハ?」


「もう受験終わったの、僕は高校生。明峰と同い年、こう見えても」と、いうことになるの。明峰もまた僕のことを、十三か十四歳と思っていたそうなの。……無理もないけど。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る