第七八五回 奇想天外! 千佳の微笑みはその倍返し。


 ――喩えるなら、勝利の女神が微笑むのはどちらか? 僕の答えはもう決まっている。



 昇竜しょうりゅうのように、天に向かってかざす拳がすべてを語る。


 そして変化する右腕。ガトリング砲と化したタロの右腕。寸暇を与えることなく襲い掛かる青い閃光。まるで高速の流星群のよう……ならば目には目を、やられたらやり返す。


 ――倍返し! と、僕の心の声が太郎君に伝わった。


 炸裂するタロのガトリング砲。ムーンと化したノッコロイドのオールレンジ攻撃を撥ね退けて、高速には、その倍の高速で立ち向かった結果、その倍返しは、すべてを溶かすようにキラキラと、氷の結晶の群れを描くように、或いは天の川にも似た光の川と化して。


 ムーンは、本当に無となった。


 つまり粉々に粉砕されたのだ。


 唖然となったけど……その後には、「いい笑顔だ、千佳ちか


 と一言、添えてくれた太郎君。僕は傍にいた。この時ばかりは同じブースの中で並んで座っていた。密も密だけれど……この場合は二人で一つだから大目に見てほしい。


 見事なるウルトラ・タッチ。この度は二人が合体してウルトラ・タロとなった。「そう言っても過言ではないぞ、千佳。ありがとな」と、太郎たろう君はそっと言ったの。すると迅速な対応のようにひかる君が、それからりんが、この場へ駆け寄ってきた。……正確には歩み寄ってきただけど、心はそうなの。凛は義足の右脚を懸命に動かし早歩きだったから。


 この場……


 僕と太郎君のいるブース。そこで操縦していたから。魔法少女もウルトラ・タロも。


南條なんじょう、第一回のチャンプは健在だな、完敗だ」と、輝君。


「いやいや紙一重だったよ、それにしても北條ほうじょう、やっぱりお前ゲームすると人が変わるんだな。いつもは大人しい優等生みたいだけれど、今回で確信に至ったよ」と、太郎君。


「ま、まあ……凛は驚いてたみたいだけど……」と、チラッと輝君は凛の様子を窺う。


「違う輝が見れて、中々面白かったよ。やるじゃんって感じで」と、凛は満面な笑顔。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る