第七八三回 最終形態! それは驚異的な形となるの。


 ――ウルトラ・タロの頭部には二本の角と鶏冠がある。その鶏冠は脱着式だった。


 というよりも、まだまだ謎の多いウルトラ・タロの生態。鶏冠はブーメランのように飛ぶけれど、有り得ない軌道を描いていた。それは太郎たろう君の意思で動いているようだ。


 或いは、二本の角にも仕掛けが……と思いきや、天から降り注ぐ光の刃を、つまりは電撃を放出している? そしてノッコロイドの胸にヒットしている鶏冠ブーメランは、深々と、刺さっていて……そこを目掛けて人差し指を向けるウルトラ・タロ。二本の角から放出している電撃を向けた指先に集中し、まるでビームのように発射した。


 ――サンダーアタック! と声も高らかに。


 その青い閃光、電撃は、鶏冠ブーメランを伝って、ノッコロイドを爆破したのだ。


「やった!」との歓喜の声とともに、僕と太郎君は声高らかに。


 バラバラとなった機体、ノッコロイド。すると「フフフ……」と不気味な笑いが聞こえる、彼方から、バラバラの宙を彷徨う破片から? いやいや、ひかる君から……


 僕らよりも彼の近くにいるりんの、ちょっと引いたような表情が、それを物語っているということは、まだ何かあるの? と思わざるを得ず……僅かばかりの引っ掛かりが、


「かかったな」


 とポツリ……漏れる彼の声が、次なる展開を物語った。


 バラバラになった機体は、粉々になった胸部以外は、ある程度の原型を保っている頭部と四肢。お腹の部分の、コクピットらしき丸い部分。……すると真っ白になった。雲の上よりまだ高い、暗黒の、宇宙空間の背景が急に光り輝いたのだ。無数のビームがタロに向かって放たれたのだ。咄嗟のこと、避ける避ける避けるけど……


「どうよ? これがノコギリ―から可変したノッコロイドの最終形態、ムーンだ」


 と、もはや美形やイケメンの域など関係なくガハハ笑いの輝君。凛は凛で、もうドン引きに近く言葉も失うけど、僕と太郎君は「ムーン?」と合唱する。それも疑問符で。


「そうだとも。ムーンは月ではなく『無』……形がないという意味なんだよ」と、これまでの輝君とは別人とも思える彼の人相。これ程までに、人は変わるのかと思える程。



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