第七七九回 そんなこともあって、第一回戦を迎えた。


 ――℮スポーツ部門。午前十一時ちょうど。待ちに待った出番がキタ!



「最初から飛ばすぜ、相棒」


「おう、フルスロットルだ」


 太郎たろう君と僕、この度から定着しそうな合言葉。……何かいいでしょ、ハードボイルドぽい感じでカッコよくて。でもアバターは三度同じもの。僕は魔法少女。太郎君は、やはりウルトラ・タロ。「タロ!」との掛け声で変身するの。バッジの輝きがその印だ。


 魔法少女のモデルは、やっぱり僕。黄色のコスチュームだ。魔法少女の武器といえばステッキ。定番のアイテムだけど、僕の場合は刀に代わる。場合によっては槍にも。


「尋常に勝負!」


 と声高らかに、颯爽たる薙刀の攻撃。そのアバターはりん。まるでレッドコメット専用機のような三倍速の動き。旋風のような旋律……ともいうべきもの。この戦いは、やはり僕と凛の一騎打ちとなる。リアルでは敵わないけど、℮スポーツなら対等に勝負できそう。


 なら……


「お互い動きの読み合いだね、凛」


「やっぱり手強いな、元キングキングスというのも伊達じゃないね、千佳ちか


 そうなの。ゲームだけれど、列記としたスポーツ。お互いを認め合った上で戦い挑むことが、僕のモットーだ。三度のウメチカ戦をもって僕は確立した。自身の信念をだ。


 しかしながら簡単ではない。なにせ凛の動きは三倍速。その先を読むには、やはり肉を切らせて骨を断つという部分が必要となる。無傷で勝てないのは百も承知。それでも僕は勝利に執着する。僕が独占しているこのバトンを、太郎君に渡すため。太郎君は控えているの、北條ほうじょう君との戦いに。北條君もまたスピード系。音速の世界を縦横無尽に飛び回るのが特徴。……それは僕と凛の戦いが終わってからだ。今は集中……


 凛の薙刀はリアルとは異なり殺傷能力が抜群なの。ヒットしたなら僕のアバターは真っ二つとなる。それに対し、僕のステッキは槍となって一撃必殺を狙っていた。



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