第七七六回 テーマは朝霧の出陣。


 ――お空と僕らの間は、水蒸気となるの。



 ゲリラ豪雨ともなる雨は、大地に聳え立つ僕らの熱気とぶつかり合ったその結果。


 その先にはきっと、快晴なるブルーを見ることができると確信する。スマイルの異名を持つその様。僕らの持つ想いが、お空の笑顔も取り戻してみせるとの、その意気込み。


 三度は勇者の出陣。


 交通機関は様々だ。バンプラ部門に出展するレッドコメット専用機二体を、丁重な梱包を施し搬送を試みる梨花りかは、パパとお母さんも一緒に車の中。軽自動車だけど、搬送能力は普通自動車よりも長けている。車の色は緑。量産型だけど、とても頼りになる代物。


 すると未来みらいさんは、やはり赤いお車……

 彗星の如く現れそうな趣の。梨花の武者震いが、僕の身にも巻き起こっていたから。


 梨花にとっては、やはり未来さんとの決着になりそうだ。ともに協力し合った時期もあったけど、ライバル関係にあったと思う。戦うことが決定付けらている仲のようだ。


 出展するものは、レッドコメット専用機二体。

 僕も興味は湧いていた。この二人の勝負の行く末にも……


 それも、もう残り一時間と迫る。十時から展示される……僕らは今、公共交通機関を利用している。私鉄沿線を走る電車の中。一番遠いのがりん、高槻から乗車。そこから最寄りの駅という名の駅で僕らと合流。僕、千佳ちか太郎たろう君。北條ほうじょう君も一緒。可奈かなは逸早く出発していたシャルロットさんと合流するため、ピアノとバイオリンの音合わせのために。つまりはリハーサルがあったから。そこから摂津という駅。摂津なだけにせつと合流なの。そして四駅。ここが学園の登下校で利用している駅。葉月はづきちゃんのお家からの駅もこの駅。


 だとすれば……


「おはようございます」帽子を被った男の子が挨拶をしてきた。


「よお、今度は負けないからな。準決勝まで上がって来いよな」と、太郎君が言った。


「臨むところですよ、太郎先輩」と帽子の男の子……毅然とした態度の怜央れお君がいた。



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