第七七一回 それは、お月様の日。


 ――マンデー。お月様が見える時刻も、冷めない熱気。隣接する二つのお部屋で。



 とくに梨花りかのお部屋は、週初めも関係なく激戦区。激戦区といえば、昨日をもって選挙は終わったけど終わったから、未来みらいさんは最後の追い込みに入っていることが容易に予想される……僕らにはないけど、未来さんにはあるから選挙権。


 未来さんとは、梨花のバンプラを通じて知り合った。そして未来さんは、かつての瑞希みずき先生の生徒だった。それから僕に、℮スポーツ復活のキッカケを与えてくれた人だった。


 僕ら姉妹にとって、ある意味では縁深き人だ。


 出展するバンプラ。つまり作るバンプラは……実は同じもの、レッドコメット専用機が二体。ピンク系の機体であることは言うまでもなく、入手方法も同じと言った。


 ということは、ラーメン店・来夢来人らいむらいとの景品で入手したもの。つまり僕としょうさんよりも前に、チャーシュー麵の特盛に挑戦し、勝利を得た者がいたということになる。


 誰なのか? 未来さんと関わりある人物であることは間違いないけれど……御想像にお任せになりそうなの。ともあれ同じものだけに、勝負はハッキリしてしまうの。


 だからこそ入念に。


 何がそこまで梨花を駆り立てるのか? きっと同じお部屋で一緒に作業している公太こうた君もせつも翔さんも、僕と同じことを思っているだろう。そのことは今宵……梨花と二人きりになったことで知り得たの。お休み前の一時ひとときに、そのことが優しく招かれたの。


 ――レッドコメットはね、僕がパパを想う大切な気持ちなんだ。


 そう熱く語った意味について。それは……パパもまた、レッドコメットを推していた一人だった。そこには梨花との大切な思い出が、予想を上回るほどに溢れていた。


 梨花が小学三年生の頃だ。一学期を終えて転校した。……でも梨花は、夏休みにお友達と遊ぶことを楽しみにしていたのに、突然のお別れで、泣いちゃったの。パパが懸命に宥めようとしたけど、梨花は怒っちゃって……そこでバンプラを購入して、作り始めた梨花の前で。すると梨花の顔も笑顔になって、一緒に作ったの、レッドコメットの専用機を。



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