第七七〇回 もう来週の話だから。


 ――御察しの通り、それは『第三回ウメチカ戦』



 もう一週間を切った。確かに僕らは出遅れた。去年までなら今頃は、『激闘編』と題せる程の、太郎たろう君との猛特訓がとっくに行われていたはずなのだけれど、今になって、


 僕らは、やっとそのスタートを切った。


 ウメチカ戦で待っていると予想されるのは、去年を上回る強豪の面々。瑞希みずき先生のチームも、かなりのグレードアップを図っている様子。予想もできないほどの強さなの。りん北條ほうじょう君のペアーと組んだという風の噂……四人チームで構成されたという風の情報。



 元々は瑞希先生と、瑞希先生と姉妹と間違われそうな容姿の佳子よしこさん……ン? 一人足りないと思った。えっと……佳子さんの息子さんの未来みらいさんがこの度いないの?


 すると、それに察したか? 或いは僕の気になっていることを理解したのか?


「未来さんなら今回℮スポーツ部門には出ないと言ってたよ」と、梨花りかは僕に言った。


「そらまた何で?」と、思わず僕は訊いてしまった。


 それ以上の詳しい情報は、本人でなければ知り得ないことと思ったから。梨花はあくまで、その未来さんが℮スポーツ部門に出場するか否かだけしか知らないと思ったから。


 だけれども……


「挑戦状が来たの、未来さんから。

 どちらがレッドコメットを推してるのか勝負だって。いくら未来さんだからって負けられないの、今回ばかりは。レッドコメットはね、僕がパパを想う大切な気持ちなんだ」

 と熱く、まるで熱血スポ根よりも遥かに熱く語った梨花。


 僕の方が圧倒されるほど、梨花の秘めた決意は半端なく、寧ろ恐ろしいほどだった。


 半端な気持ちでこの戦いに挑んだら、梨花に「修正してやる」と言われながら、思い切りぶん殴られそうな、そんな恐ろしさを感じたほどだ。……ああ、猛反省だと二人で。


 太郎君と一緒に僕は、心を入れ替える思いで訓練を開始した。日は迫ったけど……



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