第一〇六章 そして、舞い降りたレッドコメット。

第七六九回 奴だ、奴が来たんだ。


 ――その速度は、通常の三倍速。三倍の速さで右からやってきた。



 されども僕は、それを左へ受け流して……


 梨花りかの手に渡った。つまりは梨花が、企んだ通りの結果となった。僕と同じくしょうさんも得た景品を左に……いやいや梨花の手へ、受け流す結果となったの。


 それこそが通常の三倍の速さを誇る機体。

 いや、その機体に搭乗するパイロットの操縦技術から、その名が付いたのだと思う。



 ――レッドコメット。それがそのパイロットの通り名。梨花はそのパイロットを推している。それは勿論アニメの世界。そのアニメ専門のプラモデルがバンプラなの。梨花が好むのは、まさにそのレッドコメットが搭乗する機体。僕らが得た賞品が、まさにそれ。


 だから二体ある。どちらもカラーリングはピンク系統の赤。


 そして、梨花の大好きな色もその色。それほどの推しなら、『書くと読む。アニバーサリー・チャンピオンシップ』の第二回のお題で書けたのだと思うけれど……


「あ、あれね。まだ時期じゃなかったから。今こそがその時期。このウメチカ戦のために温めていたお話となるから。……だからね、ちゃんと狙ってたから。そう、狙ってた」


 と、梨花は納得させようとしているのが見え見えで、自分で自分を。本当のところは(しまった)と思っているくせに。「決して忘れてたとか、思いつかなかったとかないんだよ」と、それが証拠に訊いてもいないのに、懸命に言い訳もしながら……僕は僕で笑いを堪えるのに必死で。でも、その奥底にある潜在的な部分では、やはり応援している。


 梨花のお話も進んでゆく。


 一卵性双生児でも趣味は異なる。だからこそ、お互いに切磋琢磨という関係。可奈かなもまた、この度は新たなチャレンジだ。いつも一緒だった三人が、其々の部門に分かれて切磋琢磨するという新たな試み。なら、ウメチカ戦のジャンルは広がっている。年々グレードアップする内容。後ろ向きはなし。前向きに、前へ進むのみ。僕らの前進も同じくで。



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