第七六六回 祝・令和四年七月六日。


 ――その日は三度目の正直。つまり三度目だった。



 僕らがお互いのことを知ってから、三度目のお誕生日。十六歳を迎えた。今年はしっとりと穏やかに迎えるこの日。どちらかといえば、静かに迎えた日だったの。


 思えば、この物語は十三歳のこの日から始まった。


 僕と梨花りか、お互いがまだ出会う前……

 お互いのことを知り合う前で、お互いが姉妹ということを、まだ知る前から……


 梨花の物語も、そして僕、千佳ちかの物語も同じ日に始まった。


 その日は雨だった。どちらも、そういえば涙していた。曇り空から始まった今年の今日は、雨の予感もしたけれど、もうお昼を過ぎたなら青いお空が広がった。そのお空は高い気温も誘って三十度を越した。年々気温は上昇しているのか、暑さの種類が異なるのか。


 ……その帰り道は暑く汗だく。


「千佳、もう溶けそう」「僕もだよ、梨花」と並んで学園の帰り道。この間は中間考査が終わったばかりなのに、もう期末考査。この帰り道こそが、頭を休める時間ね……


 しかしながら帰ったら、お家に着いたのなら、細かくいえばお部屋に入ったのなら、基本は寝落ち……してしまっていた。そんなわけで今この有様。明日へ繋ぐための執筆に転じている。……とはいっても、もう日付変更線は超えて夜更けのスキャットで……


 大宇宙で天の川。織姫おりひめ彦星ひこぼしが一年越しの再会を迎えたのだ。そう、瞬くお星様。


 呼吸もピッタリに僕と梨花。お互いのお部屋のビッグなウインドウからバルコニーに出てバッタリと顔を合わせたの。改めて思う……十六歳を迎えても、まるで鏡を見るようなお互いの顔、そして容姿をも。この出会いもまた、織姫と彦星に通ずるものがあるように思えた。その理由を求められると困るけれど、見上げるお星様は、とても綺麗だから。


 僕らのお誕生日の醍醐味は、きっと今この時のこの場面……

 七夕という日。七月六日は、この日に隣接しているから……


 七夕は、僕らのビッグなプレゼント。バースデーケーキも美味しく味わうの。



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