第七六四回 水玉のカーテンを、そっと開けてみたら。


 ――それがきっと、今の僕の心境。雨の御堂筋にも眩く、でも優しい光が差した。



 梅田で乗り換えた御堂筋。そこから、もう少し先。僕の手を引っ張るしょうさん。その道程を駆ける中、その背中は頼もしく、いつの間にか僕の心は和んでいた。


 別に深い相談をしたわけではなかった。

 そんなに長い会話もなかったけど、他愛もない話、それだけだった。


 そして到着。その場所は、やはりラーメン屋。翔さんがアルバイトに精を出している場所だった。今日もアルバイト? と思いきや「おやっさん、チャーシュー麵の特盛二つ」


 と、大きな声で颯爽たる注文。


「さっ、食うぞ。これを完食したら、クーポン券が貰えるんだ。いけるだろ、千佳ちか


「今日はお客さんなんだね、翔さん。どれくらいのボリューム?」


「おおっ、いいぞいいぞ。初めは敬語だったから心配したけど、もうすっかりだな」


「でも梨花りかはどうして僕だけを? 一緒に食べたら良かったのに」


「まっ、梨花は梨花なりに考えたんだろうな。と、言ってる間にほら来たぞ」


 ドン、ドーン! と効果音を奏でながら、テーブルの上。えっ、何々? と思えるほどの大きさ。それに合わせた溢れる程のチャーシュー。どうやら麺は埋もれている様子。


 まずは御出汁。豚骨ベースだけどアッサリ……


「おおっ、いい食いっぷりだな千佳、俺もガッツリいくか」と、後はもう夢中。食することに夢中。量的にいえば……喩えるなら牛丼ならメガ牛丼に匹敵、いやいや、その一・五倍はありそうな量。周りのお客様の注目を集めるほど、ガツガツ食すその迫力。これってまるで何かの大食い大会? と思わせるほど、歓声も上がっていて……


「よし、二人とも完食。さあ、景品付きだ」


 と、おやっさんこと、翔さんのラーメン道の師匠・会田あいださんが表彰状とトロフィーと思いきや……思いもしなかった景品。まさかのバンプラだった。しかも梨花好みのレッドコメット専用機で……「梨花、仕組んだな」と僕と翔さん、二人合唱して。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る