第一〇五章 サン・シャイン!

第七五八回 梅雨の終わりは夏の扉。


 ――七月待たずに、梅雨明けは発表された。節電節水も共に道連れ。



 そんな背景の学園は、とくにいつもと変わらないように見えたのだけれど、僕らの知らない所では、僕らの想像もできないような事件が起きていたの。……それは、突然。


 授業始まりのアマリリス。


 僕の隣の席、りんが帰ってこないの。用事があるからって、昼休み教室を出て以来。まだ次の授業には、少しだけ……気持ち程度の時間はある。それ前に何? この胸騒ぎ。


千佳ちか、何処行くの? もう授業始まるよ?」


「急にお腹痛くなったって言っといて、梨花りか


 と、その言葉を残し、僕はダッシュもダッシュ、猛ダッシュ。ダンダンダダンと勇ましくも響く足音。廊下は、半端なく熱いけれど、今は凛のことで頭いっぱい。何処へ向かうのか? それさえも考え無しに駆け出し駆け上がる階段。二階から三階そして……


 踊り場へ。その陰から、見える姿……


「千佳、まずいとこ見られちゃったなあ」


 と弱々しい声に、ボロボロという表現。傷を負った凛が、そのままバタッと倒れた。


「ちょ、凛?」


 僕は駆け寄るもっと傍に。薙刀を握っていた。制服姿のまま。何があったの? と思う前に、ともかく担ぐ。とはいっても背負うのがやっと。義足も外れたいたから、とても尋常ではない出来事だったと思える。今は保健室に向かう。凛は僅かながらの意識で拒んだけれど、「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」と、僕は頑として言った。


 そして保健室、案の定、先生はビックリしていた。


 それは僕と同じで「何があったんだ?」と、その一言に尽きる。先生といっても保健室の先生だから、すぐに手当てもしてくれたの。その先生は男性で、玉緒たまおというお名前。


「あくまで応急処置だから、ちゃんと病院で診てもらうんだよ」


 と白いクールビズが印象を残しつつも、的確なお言葉もまた、脳内に残った。



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