第七五七回 双子あるあるは、ある種の予告みたいに。


 ――バーガーを食すタイミング、コーラーを呑むタイミング、いずれもピッタリ。



 それはきっと、向かい合わせている双子同士が思ったことと、可奈かなの表情が物語っていた。それが言葉となったのは、もう少し未来のお話。この場で薫英くんえい女子のそら姉妹と別れた後のお話。また会う約束も含め、共にウメチカ戦で健闘しようと、切磋琢磨しようとも約束。彼女たちと僕たちの帰路は、この駅を境に反対方向……


「ホント思い出したわ、あなたたちが初めて顔を合わせた日。夏の学園で」

 と、可奈は言う。帰路を走る電車の中で。


 緑深くローカル電車。普通しか止まらない僕らの最寄りの駅。


「でも可奈は、僕は僕、千佳ちかは千佳で見分けたじゃない。僕から見たら、まるで鏡を見てるような感覚だったのに、よりによって髪型まで酷似で、着てるものまで同じ……」


 まさにペアールックだったの、偶然にも。……いやいや偶然以外の何ものでもなく、お互いがお互いを、お初にお目にかかった日だったから。その前はないのだから……


 その偶然は、奇跡とも呼べるほどの確率。


「お弁当の時、そこがもう醍醐味。二人並んでいるとね、食べる順番も、お茶を飲むタイミングも面白いほど同じで、おまけにウトウトするのも二人揃ってだったから……」


「そうそう。痛かったよね、ハリセン。ねえ、千佳」


「そうだったね、梨花りか。さすが関西名物よね、可奈」


 それはきっと、二人揃って悪魔のお顔へと変貌を遂げ……「あっ、梨花も千佳もコラボしてみたら、エッセイで。二人が主人公というのもどうだろう? 例えばねえ……」


「例えば?」と、僕と千佳は合唱。


「交換日記のような、そんな感じの」と、裏返る可奈の声。


 ポキチ、ペキチ……と続く効果音。可奈の悲鳴も混ざり合いながら。そこを超えるのなら、梅雨は開けそうなそのようなイメージ。僕の千のストーリーズが終わってからの、新たなる物語への幕開けとも。交換日記ならぬ、交換エッセイへと。恐らく前代未聞。



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