第七五五回 そこから時は経ち、セピア色へ。


 ――その巡り合い、今ここに。


 渡り鳥たちが求め求めて群れ。いつの日か出会っていたのか、その群れへ再び。


「ほらほら、この子よ、しっとりバラード系な子」


 と言いながら梨花りかの手首を掴む、薫英くんえいの女子生徒の一人。しかも、さっきの梨花の言ったことを無視して、一方的に盛り上がっているような感じ。すると、今度は……


「そしてこっちは、ヒロインな子。℮スポの天才」


 って僕? もう一人の薫英女子に、梨花と同じように手首を掴まれ、もう訳が分からなくて「何なの? 僕ら何かした?」と思っていたことが言葉に訳され声になって、


「えー? 忘れたの? 私たちのこと」


 というものだから、この雨音とともに記憶を辿ると、そこはセピア色な世界が。広がる広がる広がりゆく……野に咲くお花のような世界観に。大いなる変化を遂げた日、


 ボッチのレッテルが、僕の中で剥がれた日……


 つまり覚醒した瞬間、僕の中で革命が起きたの。


「特にあなた。私たちに勇気を与えてくれた。だから今こうして、学園の帰り道……」

 と、渋い表情も柔らかな笑顔へと。薫英女子の二人が、


 この駅の外の雨模様を、セピア色に変えて、パッと雨もストップした。まだハーフ。どんより雲と晴れ渡る青空の丁度ど真ん中。その時だ、僕にはわかったの。


「大きなことしたんだね、僕らは君たちにとって」


「ええ、とってもビッグなこと。鷲掴みにしたんだから、ねえ、これから時間ある? マクド奢るから。もっともっとお話しようよ、ウメチカ戦のこと。そしてあなたたちのことも、もっと知りたいから。今度は私たちのことも自己紹介込みでお話するから……ねっ」


 すると自由、僕も梨花も掴まれた手首が。


千佳ちか、僕らは何をしたの? この子たちに?」


「それは『レッドコメットのバーガー』を食しながら、お話するよ。この子たち、悪い子じゃないから心配ないよ。……そう。僕と同じ匂いがしたからだよ……」



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