第七五四回 そして水無月は、青い水玉模様。


 ――気怠い湿度。どんよりとした雲は、水蒸気のような青い水玉を誘っている。



 冷たい雨は……


 いつの間にか温い雨へ……



 バラード調な雨音の調べは、ハードロック調へと変貌を遂げて、その帰り道は傘をも通り越してリュックもその中身もずぶ濡れ。学園から駅まで歩く間に、もうその有様。


 しかしながら、弾む会話。


 それは周りの人々、周りの学生たち。別の学校の生徒たち。


 僕らの学園の近くに、薫英くんえいという学園がある。……情報通の可奈かなの情報によれば、僕らの私立大和やまと中学・高等学園とは姉妹校にあたるらしい。その正式名称は私立薫英高等学園という。制服からして、その学園の生徒と思われるの。囲まれる、周囲を囲まれて……


「ねえ、あなたたち」


 と、声を掛けられ、いずれも女子生徒。髪長く何処となく大人びた趣。もしかして上級生とも。しかめ面眩しく……ではなくて、睨まれていて、ゾクッとする恐怖も併せ……


星野ほしのっていう子、知らないかな?」


「ホントよく似てるの、二人とも。有り得ないほどにね」


 ドキッとする鼓動は、恐怖を煽る。それは紛れもなく僕を、僕らを指している。世界広しといえども、まるで鏡を見るようなソックリな二人は、そうそう滅多にないと思うの。


 すると、「おーい!」と声が。その声の先を見ると、


 まるで偶然を、ドラマチックに描いたような光景や、その後の反応、続くお話さえも。


「り、梨花りか」「ちょっと千佳ちか、それに可奈まで、待ってって言ってるのに先先歩くから」


 ……と、近づいてくる。僕らが囲まれているのも関係なく、堂々と割って入った。


「ほら、この子たちよ、星野って子たち」って指さすの、彼女たち。すると梨花は、


「何なの君ら、人を指さすなんて失礼じゃない。まず君たちから名乗るのが当然でしょ」



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