第七四九回 そして、ここは二人だけの空間。


 ――それはそう、二人だけの国となった。一緒にいるだけで最高潮。


 一緒に、横に並んで座っている。目の当たりにはモニター。PS4・5の画面……


 思えば、年頃の男女が二人きりで一つのお部屋なのだけれど、御両親とも公認の上。それ以前に、未来の娘とも思われている始末。……でも、とても心地よい始末・・なの……


 あまり意識すると、

 やっぱりぎこちなく、顔まで火照ってきて、しかも静かなる間。交わす言葉も見つからずで、フワフワと地に足が着かない、そのような心境ともいえて、だから、だからね、


「あ、あのっ」

 と、呼吸もピッタリに合唱になる。


「あ、千佳ちかから」「あ、太郎たろう君から」と、なるべくゆっくり、ゆとりを持とうと、譲り合いに走って、結局は太郎君から「何か飲む?」と問うたから、ちょっとホッとしたの。


 ――暑い。


 とは言っても、それは『熱い』と表現される。顔に集中しているから。


 それに、以前は気にしなかったことだけど、気になることも少しばかり増えたから。それでも僕の口から、女の子の口から言うのが、ちょっとばかり、恥ずかしくもあって。


 思えば僕は、ジョギングの傍らで、ここに来た。


 なら、大丈夫だろうか? クンクンと嗅いでみる、汗のにおい。そんなにわからないとは思うけれど、……意外とにおうの。脳内では、その場面に合わせた効果音が奏でて。


 すると、そこへ太郎君が、お盆にグラスを二つ載せて、麦茶の入ったグラスを、机というのか卓袱台に載せて、僕の傍へ。……僕は顔を、きっと赤くなった顔のままで、


「僕、一回着替えに戻った方がいいかな?」と言ったの、俯き加減の俯いたまま。


 なるべくオブラートに包む。これだけでも恥ずかしく、精一杯の言葉だったの。


「千佳の汗なら気にならないよ。千佳に汚い所なんてないから。ただ風邪ひいたら大変だから、ほら、俺からプレゼント。きっと千佳に似合ってると思うんだ」


 受け取る、そのTシャツ。前から欲しかったもの。太郎君は覚えていてくれた。



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