第七四八回 そして、週末は二人きりな時間。


 ――まるで祭りの後の静けさにも似たような、そんなソフトな土曜日と日曜日。



 僕はジョギングも兼ねて、珍しくも駅の方角。


 表札は、もう変わったけれども、鯉のぼりは去年と同じ。僕はウォーリー君を探せのような白いTシャツと紺の短パン……シューズは、この間パパが買ってくれた黄色。


千佳ちかがジョギング頑張ってるから』との言葉も添えて……なら、


梨花りかにも買ってあげて。これからは僕と一緒にジョグ・・・するから』と、いうことで、僕と梨花は色違いのお揃いで、足のサイズまでも僕と同じなの。身長も、お子様かどうかは別として体型も、体重は……内緒だけれど。言ったら、その、あとが怖いから……


 まあ、それはさておき、

 梨花は言ったの。「初めて会った時よりも、ずっと明るくなったね、千佳」と、今朝起きしなに、息もかかるほどの近距離で、僕の顔を見ながら。見れば見るほど……


 まるで鏡のように、僕にソックリ。まあ、見慣れた顔だけれど、改めて不思議な出会いだったと、そう思えたの。……だから、守りたい。このままずっと、これからも。


 そして表札。


 そのお家は変わらないままだけれど、その家族は二人から三人になったという。親子三人……御両親が一緒。それが何よりも、子供にとっては安心できる環境と思える。


 すると、ドアが開いた。玄関のドア。聳える鯉のぼりの、そのお家。


「来たよ」と、僕は和やかに。


「よお、上がれよ。早速やろうぜ」と、太郎たろう君は満面な笑顔。


「うん」と返事をし、招かれ上がる玄関から、お家の中へと。表札は、霧島きりしまから南條なんじょうへと変わっていた。それはまた、御両親への御挨拶を意味するの。僕は表札が変わってからは初めての訪問。もちろん顔を合わせた。御在宅していたから。太郎君のお父さんと。


「やあ、来てくれたんだね、千佳ちゃん」


「お邪魔致します」との御挨拶から始まった。今日という一日が……



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