第七四六回 柱の傷は、鯉のぼりへと。


 ――そして、柱の傷。旧一もとかずおじちゃんたちと同じ柱に、僕らが背比べした証の傷。



 ここは、旧一おじちゃんと、僕らのお母さんたちが暮らしていたお家で、僕らの里帰りの場所だから。お盆にまた来るけれど、来年もまた背比べしようと僕らは約束した。


 僕と梨花りか可奈かな……


 それから、葉月はづきちゃんも。毎年ここを訪れて、背比べの更新をしようと約束した。


 するとね、

 何やら奥から、物置の方から、パパたちが……


「おーい、梨花、千佳ちか、ちょっと手伝ってくれ」と、応援要請のお声も追加された。もちろん可奈も、僕らが引っ張った。つまりは道連れだ。


 中から見てもそうだけど、


 お外から見ても広々と広いの。庭まであって物置と言っていたけれど、納屋とも思えるの。そこから運んだものは、赤・青・黄色の……大きなもの。


 それらがパタパタと、宙を泳ぐの。お空を泳ぐお魚さんで、その種類は、僕と太郎たろう君のような関係。または可奈と一文橋いちもんばしさんのような関係でもあり、これから進展すると思われる梨花と公太こうた君のような関係。――つまりは『恋』なの。だから三匹並んで泳ぐの。


 赤は、バンプラのレッドコメットが好きな梨花。


 青は、お星様が好きな可奈。黄は、どっこい力持ちな……ではなくドクターイエローが好きな千佳、つまり僕だ。……と、そう思っていたのだけど、実はね、


「あの子、きっと見ているよ。鯉のぼりと、この子たちが元気なのを」


 と、お祖母ちゃんは言ったの、お空を見上げて。快晴のお昼のお空。


 お祖母ちゃんが言い出したことなの。鯉のぼりをあげようと。そうなの、お歌の通りに屋根よりも高い鯉のぼり。このお家は三階建てで、屋根裏部屋も完備。木造だけれど、頑丈な、千年先でも保証できそうな、古式ゆかりな建物だ。そして、その上を泳ぐから、鯉のぼりもビッグサイズだ。壮大なロマンが、ここから広がるの。



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