第七四四回 糸のように絡まる想い出。
――喩えるなら、糸を紡ぐように。窓から見える雨の糸は、昨日の余韻を残した。
昨日の余韻……
まず今日は、五月四日。ぼんやりとしたお空と同じように、ぼんやりとした屋根裏部屋での時間。体育座りで乾草のベッドの上。何をするのでもなく、只々、窓を眺める。
何処を見ているのかといえば、遠く……
喩えるなら、そこから彼方の、脳内の宇宙空間にも似た場所……
昨日は、多くの人に会った。その繋がりは、
旧一おじちゃんの願い。……手紙に託した、その言葉にある裏側にも。それはまた、瑞希先生のお母様の強き思い。暗黙の了解で娘に託した思い。
昨日よりも今日、今日よりも明日へと、
地に足の着いた前進を。……僕は、この子たちに出会えたから、できたと、そう思えるの。そして、いつも陰ながら旧一おじちゃんは見守ってくれていたから。……その思いで胸がいっぱいで、そのことに浸っていた。でも、時間は進むの。その言葉から……
「千佳、皆で柏餅を食べようって、お祖母ちゃんが」
「さあ、行こ、行こう」と、
――さあ、行っておいで、皆の所へ。
えっ? ……そう聞こえたような気がして振り返ったけど、そこには誰もいなかった。
それでも、うん! と、僕は駆け下りる。梨花と可奈と一緒に階段を。
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