第七四二回 到着! ついにその時が。


 ――そう、到着なの。僕らは降りる、緑の中で真っ赤なキャンピングカーから。



 そしてけんさんは言う。


新一しんいち、俺はここで待ってるけど、この子たちのためにも、

 しっかり旧一もとかずさんに挨拶してくるんだぞ。この子たちのパパとしてな」


 と熱意を込めて言う。パパもパパで頷く、深く……


 只ならぬ関係にしか思えないこの二人、過去に何があったのか? そして十年前に何があったのか? 直接な関係にないけれど、気になる。時間が経てば経つほど、その思いは脳内で広がってくる、そんなパターンだ。きっとそう。そう思っていると……


千佳ちか、帰ったら話があるの。梨花りかも一緒に」


 と、お母さんが僕らに声をかけてきた。何やら深刻そうな趣で……と、思っていたら変化が、お母さんの表情に変化? 和やかな、その類の笑みを浮かべながら、


「もちろん、今あなたたちが気になってること。

 もうそんな年頃になったのね、二人とも。女同士のお話、レコードの想い出も交えて」


 と、僕と梨花の肩に手を触れながら、僕と梨花の顔を見てそう言ったの。


 そこで思えることは、

 ちょっぴり大人のお話なのかもしれない。――丁度その時だ。


「よお、千佳、来たぞ」


 と、太郎たろう君が。礼服を着こなした太郎君が、御両親とともに、僕らの前に表れた。それに便乗したように、瑞希みずき先生も御家族で……って、予想以上に大人数なの。


 見ると黄色と黒のカラーリングのキャンピングカーが止まっていた。今僕らがいる、この静かなる緑に囲まれた駐車場に。そしてそのまま、その人数こそが今日、旧一おじちゃんの墓標に訪れた方々。そのお隣の墓標には、瑞希先生のお父さんの墓標。


 そしてまた、早坂はやさか先生の奥様、リンダさんのお父様の墓標も並んでいるという……縁の深い墓標が並んでいるそうなの。そこはゆっくりと、穏やかに海の見える場所だから。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る