第七三九回 それから、夜を招いたの。


 ――ソフトな、優しい夜を招き。それに便乗して童心に帰るの。



「とか言いながら、いつもと何ら変わらないような」と、可奈かながチラッと僕の顔を見るものだから、「それって、僕が子供っぽいって意味?」と、ちょっぴりふくれ面? 「と言うよりも、しかめ面だね、千佳ちか」と、梨花りかが感想を述べる。ライトに述べたの……


 そうだね、明るい場所。


 初めて訪れた、元はお祖母ちゃんのお家……今でもお家かな、お祖母ちゃんの。それはまた、お母さんと可奈のお母さんが、少女時代を過ごしていた場所。これからも、ずっと残していくと、お祖母ちゃんは断言した。そこはまた、旧一もとかずおじちゃんも暮らしていた場所だから、今は善一ぜんいちさんが暮らしている。大聖寺の警察署に勤務となったから……


 町を守ると同時に、このお家も守る決意に一人立つ。


 そして、もう一所帯が訪れた。――僕らと同じ星野ほしのの姓を持つ一所帯。つまりは同じ名字の一家。そう、葉月はづきちゃんが御両親と一緒に訪れた。もちろん同じ目的なの……


 なので、三人から四人になったの。


 ちょっとばかり童心に帰った女の子たち。星野系列の女の子は皆、ここに集った。


 ここはね、星野だけに大きな四角い窓から、お星様が綺麗に見える屋根裏部屋で、木の薫りもロマンを招いているの。それに……乾草のベッド。まるで世界名作劇場のような世界観。寝転がる四人とも仲良く。そして大きな丸い眼鏡のイメージが強かった葉月ちゃんは、すっかり雰囲気も変わって、綺麗な目を、素顔を、包み隠さず見せているのだ。


 自信に満ち溢れた強い子へと。


 撫子なでしこのように、または向日葵ひまわりのように。明るく逞しく。なら、星野系列の女の子は誰もが逞しいのかも。何しろ、お祖母ちゃんがそのパイオニアと思えるから。


 そして明日は、多数の人が集う。

 旧一おじちゃんは、皆に愛されているから。


 ――僕も愛している。旧一おじちゃんに、いっぱい愛されているから。



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