第七三八回 ある意味、ロマンスなの。


 ――それはもう、十年もの間。



 田園が主な風景の道を歩む途上……そこで出会った男性は、パパの旧友。旧友と呼べる関係となったそうなの。そのお話は、静かに遡るの今この時。


 思い出は、ここに綴られる。


 想い出もまた、蘇るのだから。その男性、僕らとも初対面ではないことに気付いた。以前、数分間だけ、会っているの。……記憶の糸を手繰る。繰り返しもする想い出の中で蘇る今、その記憶。僕らが出会ったのは電車の中だ。僕が中年の男性に襲われそうになった時、助けてくれた……「マカロニ・二世さん」だったの。



 そして今、驚きの刻を迎える。


「貴様、どうしてここに?」と、パパは尋ねる。


「里帰りだよ。それより、そろそろ名前で呼んでもいいんじゃないか? なあ、新一しんいち


「そうだな、もう十年だな、久しぶりだな、けん


「それにしても驚きだよ、この子たち、新一の子だったんだな。千佳ちかちゃんに梨花りかちゃんだったかな。……それに、千尋ちひろさんのことだけど、もう……」


「……それは言うな。もう過ぎたことだし、健のお陰だったかもしれないな」「って、俺は何かしたのか?」「俺に一言、ぶつけてくれた。それに応えるのに俺は十年も……」


『待たせたんだ、十年も。

 千尋への想い。健は純粋に千尋を想っていたから、俺に真っ向からぶつかったんだ』


 そのお話、道を歩きながら聞くには、


 ――ちょっぴり大きすぎた。庄野しょうの健さんは、お母さんを想っていた故に、今の状況を強く願っていたの。パパがお母さんと結婚すること。僕と梨花が姉妹に……ありのままの家族になることを。そして明日は、健さんも。旧一もとかずおじちゃんの墓標に、僕らと一緒に来てくれることになった。今宵の宿、元お祖母ちゃんの住んでいたお家へ、送ってくれた。



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