第一〇三章 GWの中心は、五月三日。
第七三六回 人生初のサンダーバード。
――僕はこの日、ついに乗車した。
京の都から乗り合わせ。皆一緒だ。各々の指定席に座る。僕の隣は……お隣はね、
「宜しくね」と、僕に挨拶をするのだから、顔見知りなの。
「こちらこそ、宜しくね」と、挨拶には挨拶。タメ口にはタメ口……ということは、同い年の子。同い年とはいっても、お誕生日まで同じ……ということは、もう一人だけ。
該当する者は一人しかいない。
「ついに乗っちゃったね、
「なら、
「だったら同じだよね、僕と」
「もちろん同じだよね、僕と」
……せえの、もう最高! と、こだまする、ちょうどトンネルの中。搔き消される僕らの歓喜な一言、その雄叫びまでもを。長いトンネル、光の列が流れる。単調な景色は抜けたら広がるの、母なる海。青々と真っ青と……吸い込まれそうな青。マリンブルーが吸い込まれる秘密となるのか? ここはどの辺? と思うも束の間、窓に映る僕らの顔は「わあ」と広がる笑顔。きっと広がる海と同調している。……なら、一緒に見たかった。
――広がる海を。旧一おじちゃんが最後に、海を見たのはいつだったの? そう思えてならない。もしも、もしもだよ、……最期になる前に今一度、海を見たのなら、違った結果を迎えていたのかもしれない。そう思えるの。そして僕は今ここで思い出すの、記憶の奥底に眠っていた約束。……遠い昔に誓って願ったことのように思えてならないの。
そのことを確認するために、
僕と梨花は向かっているのだと思える。そこにあなたはいないと思うけれど、あなたの墓標はそこにある。今日はその前日。明日は皆が集う。あなたの墓標に、皆が……
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