第七三五回 五月三日を迎えるために、我らが今できることとは?


 ――と、いうことは『五月三日は何の日?』 という問いに変換される。



 今は、その前日の朝……その中でも早朝というべき部類に含まれ、それが証拠に目覚めたばかり。ベッドの中……梨花りかの顔が間近にある。体はもう密着で。何しろ密着してきているのは梨花の方。寝息もかかる程だから、何となくだけど、ある種のお約束。


 チュッ……


 チューに至った。やはりお約束通りの展開。まあ、想定内だけれど、昨日から通算すれば二回目。一回目は上空百メートル? の観覧車の中で太

たろう君と。二回目は今。梨花の目覚めのキスになっちゃって、


「ちょ、千佳ちか、何チューしてるの?」と、梨花の反応。


「どの口が言うの? ほらほら、梨花がしっかり僕に抱きついちゃってて、その上に梨花の顔が近づいてきたから、お約束になる以外に考えられないでしょ?」


「ごめ……ン? あれれ? でもそれって、結局は千佳からチューしたってことじゃない」


「でも原因は梨花にある。いかにもお約束って感じの顔してたからっ」


 と、言った途端だ。クスッと……梨花から笑い声が漏れて、

 僕も釣られて大笑いにまで至る。そして二人して、お腹を抱えるまでに至っていた。


 その発端は何を隠そう、隠れていた梨花の一言。


「お約束って感じの顔ってどんなん?」と、それはそれはもう想像の世界で、あまりにも面白すぎたってわけなの。するとその笑い声は、このお部屋を超え、足音をも誘って、


「何やってんの、二人とも?」


 と、お母さんが様子を見にきて……「だって千佳が」「だって梨花が」と、二人揃いも揃って、お母さんは更に呆れた顔も見せつつも、


「ホントあなたたちって、何やってんだか……」と、笑みも浮かべつつも、


「それよりも支度できてるの? お昼から出発よ、藤岡ふじおかさん一家も御一緒にね」


 そう。可奈かなも一緒なの。同じ車、キャンピングカーでもなく……特急電車で。京の都で待ち合わせして、そこからの出発。初めての『サンダーバート』に乗車するの。



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