第七三四回 三十四回目は何々? マッドな夢。


 ――夢だけに今宵。マッドという言葉には、夢中になる……という意味もあるの。



 僕はきっと、今綴りゆく、この物語に夢中。


 梅田うめだの地下から始まり梅田という姓を名乗った日から、ウメチカ物語は新章となって始まった。ううん、始まりから新章。姓が星野ほしのに戻っても、僕は新章のまま突っ走る。


 その思いを込めたエッセイは、


 ……僕が、梨花りかから沢山の元気をもらったように、今度は僕が、誰かを元気にしてあげられるエッセイでありたいと、僕はいつしか、思うようになっていた。初めは自分のために書いたエッセイだったけど、僕はいつも元気をもらっていた。温かい応援のコメントで励まされていたの。感謝感激の毎日……僕はずっと、この出会いを大切にしたいの。



「えへへ……」「どうしたの、千佳ちか?」「ありがと、梨花」「だから、何なのよ?」


 今宵は同じお部屋の同じベッドの中、僕と梨花は一緒に寝ていた。初夏の扉が開いた五月の温かな中だけれど、この温もりは別もの。心地よい温もりなの。


「変な千佳……」


「変でもいいの。明日は梨花……お姉ちゃんも一緒に家族旅行。ずっと一緒……」


「初めてじゃないでしょ? 去年のお盆だって」


「今度のは特別なの。僕が梨花の妹となって、いわば初めての里帰りなんだから」


 そうなの。行く先は此処に来る前の、お祖母ちゃんがいた場所。そここそが昔、お母さんとお祖母ちゃんが暮らしていた場所。可奈かなのお母さんも一緒に。それからパパも善一ぜんいちさんも。皆が皆、同じお家。それから、旧一もとかずおじちゃんも暮らしていた場所だった。


 瑞希みずき先生のお母様も、昔、住んでいたと言われている北陸の地。瑞希先生のお母様のお名前は、北川きたがわ初子はつこと言っていた。……そして僕は知った。初子おばちゃんは、旧一おじちゃんの先生だったということ。すると心の奥底で、潜在している部分で、縁を……深い縁を感じた。――この出会いから、究極はここから始まったと、僕は確信に至る……



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