第七三二回 FIVE! 梅田で有名な観覧車。


 ――初めて乗る、二人とも。恋は、いつでも初舞台だ。



 時間の流れは緩やかに、落ち着いた感じは、ある種の高級感を感じさせる。なので、僕のお洋服も純白なワンピース。春を超えた感じの、黄色のジャケットを羽織っていた。


 午後三時に頂点。


 梅田の街並みを上空から一望する。僕の傍には太郎たろう君。薄くとも、窓に映る僕らの顔は二人揃って満面な笑み。上空から見るのも初めてのこと。アーバンスタイルの梅田を。


 そこに言葉は存在するのか?


 ううん、景色に夢中で言葉も忘却の彼方。お空の彼方に届きそうな二人のラブラブ。キスをも辞さない状況。見つめ合う瞳と瞳が、さらに募る誘惑になる。差し込む光も見事なる演出で。デザートの前に、僕を食す太郎君。激しくもシンプルなキス、または接吻。


 或いは、チューとも。


 まさに、チューとリアルだ。そう、リアルの中で行われている、夢ではなく現実だ。


「ウフフ……

 デザート、僕で良かったの?」


「最高のデザートだ。

 とても深い味わいで、美味美味だった」


 真顔で言う太郎君……そして込み上がる熱気で、顔集中型の。


「バカ……」


「ありたきりな台詞だな」


「中身が大事なの。中身がね」


 すると、ボン! と効果音を立てる僕の脳内。(中身って……中身だなんて)と更なる自爆は取集の付かない状況へと至ってしまうのか? えらい大胆発言なだけに。


「照れ隠しでも酷いな」


「いいの、ハートが大事なの、そういうことなの」と、頭の天辺から、湯煙が白くも。



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