第一〇二章 五月は、Gの願いとWなイベント。

第七二九回 その前に、Wキック炸裂となるか。


 ――声高らかに名乗りを上げる。それが必須項目と、きっとこの人は言うから。


「仮面タイガーM、参上! 颯爽たるロープアーム」


 と、ギミック満載の右腕を天に掲げて、舞い降りる蜘蛛の巣のように編んだロープ。その攻撃を受け、攪乱される「イー!」という奇声を放ちながら、黒いタイツ姿の骨模様の集団……」のはずだったのだけれど、僕らもその中に含まれて、同じロープの中で藻掻きながらも「ちょっと瑞希みずき先生、完全に僕らがいることを忘れてるよ」と、言うと、


「あ……ごめん、テヘッ」


 と、愛嬌たっぷりに謝罪した……タイガーのマスクをしたライダースーツのポッチャリ女性。颯爽たるミス連発で、その正体まで意図も簡単に知れ渡ってしまった。いやいや僕にはもうバレていたの。多分、皆にも。特徴ありありのお方だから。しかしながら、そのインパクトはかなり強く、目立ちすぎるくらいに目立ちすぎて……


「あの、僕も推参して大丈夫かな?

 ええっと、仮面ハヤト、推参ってことで」と、もう一人現れたの、ヒーローが。


 貫録こそは、仮面タイガーMさんに持っていかれたけど、そこはスマートなアクションでカバーしている。そのマスクこそが本物の証。バッタのような趣のマスク……ここでは仮面と言うべきか。この人も、正体がわかるの。どう考えたって姿が消えたのだから、僕らの中から……一文橋いちもんばしさんが、お約束通りのタイミングで、姿を消したのだから。


 すると、ラスボスとの対戦。


 僕らは目の当たりにするの、囲む子供たちと同じように。


「いくぞ、怪人ドラゴンS。

 渾身のタイガー&ハヤトによるWキック!」


 華麗な宙の舞、実はワイヤーアクション。……呼吸ピッタリに命中する。のだけど、どちらかと言えば、怪人さんの方が合してくれているようにも見える。そしてオーバーリアクションの果てにシュッと姿が消えて


「これにて一件落着!」と、明るく弾む声で、


 瑞希先生……いや、仮面タイガーMさんが、このヒーローショーを締め括ったの。



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