第七二八回 必定を超えた偶然が、集めたもの。


 ――物ではなく者だから。品ではなく人だから。各々がこの場に、しかも同じ時に。



 まさに同じ時代に生まれし者。同じ時代に巡り合えた者たちよ。


 現実な世界は、ある意味では、異世界よりも摩訶不思議とも言える。僕は今この地に立ち尽くしながら、そう肌で感じていた。何と、皆の計画の上には、この地が入っていた。


 誰もかれもが、ここに集うだなんて思いもしなかったそうなの。


 その中で、クスッと笑う梨花りか……その発言も込々で「僕と千佳ちかだけなら、まだわかるけど、皆が皆とは。よっぽど呼吸ピッタリなんだね、僕たち」と、満面な笑顔で言い放つ。


 それを皮切りに「ホント傑作ね」と可奈かなも。「なるほど、それ程このテーマパークは定番なんだ」と一文橋いちもんばしさんもご感想を述べていく始末。するとするとするとだよ……


 囲まれたの、僕ら。


 周囲は黒いタイツ姿の……骨模様の集団。「イー」とか奇声を放っているの。


 突然のことなので、固まる硬直する縮み上がる、あとエトセトラで……それから、それらを更に囲むように、子供たちやその御両親ともみられる人々も集っていたの。……って何らかのドッキリ? と思わせるようなシチュエーションな感覚も芽生えてきて……


 いつの間にか、一文橋さんがいなくなっていた。


 しかしながら、勇敢に立ち向かうのはりんが一人。何故かはわからないけど、薙刀を持参していた様子で、華麗なアクションを描いていた。そして僕は思うのだけど、(これって絶対に練習してるでしょ)……なら、またしても凛が仕掛け人なの? と思っていたら、


「凛にも何が何だか。キリがないよ」とか言っていたの。


「へっ」と、只々間抜けな声をあげる僕。他の皆はなす術もなく捕らわれの身に……


「待て!」


 と、電光石火の声。ピーという効果音とともに、建物の陰から……いやいや、とある看板の陰から姿を現した黒と緑のライダースーツの……ポッチャリ体系の女性? それでも顔には仮面。何故かタ……タイガーマスク? だったの。想像とも大いに異なっていた。



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