第七二五回 初夏の入口。凛に見送られ、僕は彼の地に立つ。


 ――の地。それはもちろんかれの地。彼の心の大地に、僕は妖しく咲き誇るの。



 待ち合わせは、薄紅色から緑色に変わろうとしている『最寄りの駅』という名の駅の改札口。そこにはもう……彼がいる。彼と言っても彼氏という意味。だとすれは、もしかしたら、太郎たろう君以外にもう一人。その反応はりんの顔に表れていたの、いとも簡単に……


「凛、もしかして」


「わかっちゃったみたいだね。千佳ちかの思った通りだよ」


 野暮と思いつつも訊いてみたら、それ以上にわかりやすい凛の反応。顔だけではなく仕草にも表れている。隠し事したってすぐわかっちゃう子だから、とっても可愛い……


「千佳、凛と一緒に勝負パンツだから」


「思う存分ってことだね、心行くまで堪能だから」大きくハイタッチ。そして各々の道へと歩んでゆく。――グッドラック! 心に刻む女の子同士の、僕と凛の心の合言葉だ。


 思えば、北と南……


 僕は南條なんじょう太郎君と、最寄りの駅から歩む。そう、南の方へ。

 凛は北條ほうじょうひかる君と共に最寄りの駅へリターン。再び北の方へ。


 と、いうことは……凛のパートナーって、北條君だったの? そして、そしてだよ、


「太郎君、北條君とドーユー関係?」


「おいおい千佳、男同士でも気になるのか? 普通に友達だよ、友達。さっきまで一緒にしてたんだ℮スポ。それと後はだな、まあ、男同士の話ってとこかな……」


「それって何々?」と素直に興味津々で、そのあまり声に出ちゃった結果。


「他愛もない話。女の子には内緒なの」


「えーっ、ずるーい」「そんなこと言われてもな、……とても話せない内容で、だからほら、あるだろ? 女の子同士で内緒の話。それくらい恥ずかしいことなの」


「勝負パンツよりも?」と、うっかり口が滑っちゃって、言った後には熱気をも通り越して、頭から湯気が出そうで。太郎君は太郎君でクスクスと、笑い声が漏れていた……



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