第七二四回 懐かしき日、変わらぬ四月三十日の雨音の調べ。


 ――そう。小学生の頃と同じ。今も変わらず同じお布団で寝ていた。



 りんのお家でお泊りしたのは、今日が初めてではなかった。小学校の頃も何回かあったのを思い出したの。それでもって凛は、毎回……「一緒に寝よっ」って言うの。それは遠い過去、小学生のしかも低学年の頃だけかと思っていたら、今日もなの。


 したがって同じお部屋の同じお布団……

 スースーと可愛い寝息だけど、ピッタリと引っ付いて顔も近い……



 思えばいつも一緒だった。遊ぶのも思い切り遊ぶのも、それから可奈かなのお誕生日を祝うのも。お食事はお母様も御一緒に、お風呂も一緒に洗いっこ。で……まるで氷のように溶ける隔たり。今はもうあの頃のように、凛と楽しいお泊りを堪能なの。


 その堪能に脳も溶け込み、いつしか……

 窓を叩く雨音の調べをも、心地よく……


 心地よく……チュンチュンと小鳥のさえずり奏でる頃まで、グッスリと眠っていた。そしてパッチリと目覚める、お互いもお互い。それで「おはよ」とお互いもお互い……


「さあ、今日は太郎たろう君とデートだね」


「ええっと、凛はどうするの?」


「℮スポ。パートナーと自主練。そして薙刀も公園で自主練だ、パートナーと」


「凛のパートナーって? う~ん、気になるな~」


「ダ~メ。それ内緒だから」それでもって間髪入れずに僕は「ずる~い、僕ばっか。僕はちゃんと明かしたもの。凛だって明かしてくれていいじゃない」と、ハッキリと。


「なら、今日は勝負パンツだね」


「パ、パンツって……」と、予想もしなかった凛の言葉に、或いは回答に、ボン! と効果音を立てたの、僕の脳に。もうお顔もこの熱気まみれだと、真っ赤なのは明白。


千佳ちかって可愛い」と、燦々なお空に似合うような、凛の弾む笑い声が溢れたの。



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