第七二二回 星野だけに、やはりお星様の空模様……後の編。


 ――予想通りに白熱した。そのゲームは真剣勝負を招いていた、序盤から既に。



 リアリティーなアバター。凛はやはり薙刀と薙刀衣の姿。僕は魔法少女に変身するも武器は剣。魔法や光線技なしの、シンプルな格闘。薙刀と剣のぶつかり合いとなる。


 その勝負は……


 差し込む日差しは、いつしか茜色に変化していた。見れば、もう夕映えで……


「次の一撃だね」「そうだね、次の一撃」


 ――必要以上の言葉はなく、電光石火の一撃。特別な技などなく、お互いの武器はお互いを切り裂く……朝やかに染める紅い色。茜色と同化したの。そこに輝くものは、


「あっ、一番星」


 と、僕とりんは声を揃えて。ならば、もう出発を意味したの。向かう先は学園。僕は凛と共に、私鉄沿線を走る電車に身を置いた。目的も目的地もハッキリした場所へと……


 その過程で、僕らはキャッチボールで、


「やっぱ千佳ちか強いね。相打ちが精一杯だった」「ううん、凛も。僕も精一杯だった。相打ちが」「今年も出場するんでしょ、ウメチカ戦」


「うん、そこで勝負だね。凛は誰と組むの?」「エへへ、内緒。でも、千佳と太郎たろう君に対抗できる相手になれそうだから……」


 と、いう具合に、あくまで言葉のキャッチボールだから。誰にも迷惑はかけないの。


 そして学園。既に正門を潜り中庭も通過、芸術棟のその手前……


「あっ、梨花りか可奈かなは?」


「もう来てる。上、上だから。そうだね、公太こうた


 そう。梨花と一緒にいるのは恵比寿えびす公太……ン? 今「公太」って言わなかった? 公太って。君がなくなっている。それにそれに、何となくだけれど、距離が近くない?


「そういうことだね、梨花」……と、僕が言う前に、ポンポンと梨花の肩を叩きながらウンウンと頷いて凛が言うの。やっぱりソッチ方面? 何となく一致するその思考……


「そんなんじゃない」と、梨花も公太君も顔を赤くしながら、美しき合唱・・・・・を披露した。



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