第七二〇回 星野だけに、やはりお星様の空模様……前の編。


 ――風に乗って! そのために今、ビッグなウインドウを開けるの。



 それは次なる季節へ繋げるための、心の扉ともいえる。ここからが本番なの。


 心機一転! 可奈のお誕生日は、この度のお誕生日は新たな季節を呼び覚ました。少なくとも僕らの中では。そのスタートダッシュは梨花りかから。颯爽たるスマホの着信は、梨花のスマホ。出るその着信、梨花が喋るその相手は……誰? どうやら男の子?


千佳ちか、それじゃ僕は一足お先に。

 ……まあ、可奈かなのことは僕ら任せて。一番星の見える頃、芸術棟に来るといいよ。りんも一緒に。ヒントその一は、そこに集まるから皆が皆、主要メンバーが」


 とだけ、言い残したの。……その場に立ち尽くす僕、そして気付く。


 すでに出し抜かれていたことに。梨花は僕の二手どころか三手先も先に進んでいる。出遅れたのは僕の方だ。そして思う、テクテクとリュックを背負って歩きながら……


 立ち尽くすような心境だけれど、時間は流れる止まらずに。僕の選択肢はね、歩くしか残されていなかった。その行く先、その向かう先は遥か彼方とも言えるけれど……


 まずは、凛のお家。

 つまりは結城ゆうき家へ。その道程は、ご本に教えてもらった通り歩むの。


 思いの外、距離はあるの。歩むだけではなく私鉄沿線をも利用した。


 その場所は更に、ウメチカのある梅田よりも遠ざかる。逆方向なの、京の都へ向かう方向なのだ。高槻という場所。その駅で下車し、その地に立つ。もちろん初陣で……いや初めてではなく何回かは訪れている。その近くの松坂の殿堂や、その中にある淳一堂。


 つい最近ならば、そこから歩くスーパー銭湯も行ったことがあるの。


 そして教えてもらった場所がね、この近くなの。……そう、その路地裏にあった。


 結城という表札の、二階建てのお家。そこで思ったことは、お家が新しいということ。


 新築といっても過言ではない壁の色。鮮やかな白色。ストラクチャーにしたいくらいの綺麗な建物、屋根は深紅。和風な趣の、和を強調としたお家なの……



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