第七一九回 それでもって初日は、可奈のお誕生日。


 ――風を切る、早朝のジョギング。いつもと変わらない一日の幕開け。



 昨夜の柔らかなお部屋の照明から、GWの始まりを実感していた。橙色ともとれる控えめな光の中。いつしかお布団に落ち、ベッドの上……スーッと眠りに就いていた。


 そこで見る壮大なる世界……


 途轍もなく広がるこれからのこと。僕のエッセイは広がってゆく、果てしなき物語。


 そこから始める開ける夜……


 お部屋に差し込む柔らかな日差しは、いつもの日常に戻して、実感と安心を与えた。


 どうしてそう思えたのか?


 目覚めた時には、わからずにいた。ただ、友のお誕生日が今日この日だったの。決して忘れていたわけではないの。りんのお家にお泊りする日と重なっただけ……ならば、二大イベントを実現することなの。それが今、風の中で巡る思考に対するアンサーとなった。


 ジョギングは、いつの間にか枠を超え……


 その思考の中、ダッシュへと変わっていったらしいの。お家へ着くなり僕は、すっかり忘れていたことに気付いた。……確か、一緒に走っていた梨花りかが、いなくなっていた。


 キョロキョロ辺りを見渡すも、


 息切れ? それと混ざるお馴染みの声……「ちょ、千佳ちか、何急にペース上げてるの。僕がいるってこと、忘れてた?」と、今にもグロッキーしそうな梨花。そんな姿を見て思うこと、それは「梨花が運動不足なだけじゃない? 僕は終盤スパートを切ってるの、最近は」と、もう既に言葉になっていた。更に「じゃあ、梨花はこれからも運動不足を解消するために、僕とひとっ走り付き合うこと。決まりだから」と言い放った。


 そして梨花と共に打ち合わせ。


 凛を交えての、可奈かなのお誕生日会をサプライズ的に行うこと。僕ら二人の力をもってすればできそうな領域。梨花には可奈を。僕は凛を誘導することで、今日の成功を見る。


 そのイメトレは繰り返される。今からは論より証拠で実行するのみだ。



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