第七一三回 駆けるシナリオは旋風に。


 ――森と泉は自然の象徴。僕は一体となって、歩むプールサイド。



 入水には……と思いながらも「温かい」と、思いを超え声になる感想か言葉。今の僕の服装は水着。何で水着を持ってきているの? なのだけど、りんが持ってきたの。


「レンタルしてきた」とだけ言っていた。多くは語らずのまま……


「準備体操は必須項目。できたら入水で、しっかり歩いてみて……」


 とらんは言う。凛と何やら入念な打ち合わせをしているように……それだけではないようで、天気てんきちゃんも……いや、天気も仁王立ち。スパルタな空気とスパルタな風格も纏いながら。それでも僕は「泳がないの?」と訊いてみると、その回答は意外なもの?


 そうとも思えるような、そんな天気の表情。


「必要なのは足腰の強度。ステップに耐えゆる練習なの。この宮殿のようなホテルも土台からしっかり作られてるから、歴史あるホテルを名乗れるの。私は知ってる。このホテルは、私のお祖父ちゃんとお祖母ちゃんの時代から立っていたのだから。小さい頃の思い出の場所だから。決して崩れない作りなの。そんな風に千佳ちかにはなってほしいの」

 と、天気は、和やかに言うの。


 切羽詰まるような仕草ではなくて、穏やかで、その先を見据えているような……



 なので歩く湯の中を、温水の中を。


 水圧に負けない足腰の訓練を意味しているのは、もう理解している。水深は、僕の肩ほどにある子供用とは異なる競技用? 元はどんなホテルなの? と興味も生まれる。


 溢れる興味は、

 僕の心を癒し、モチベーションも上げてくれる。社交ダンスは二人の合わせ技で、僕は今その土台作り。太郎君と……男性とステップを合わすため、僕は歩く、その思い。


 寄せては返す波のよう。喩えるなら。


 チェックはしていた『シャルウィダンス』教えてくれた天気が、僕のために……



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